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映画とか本とか好きなものとつぶやき

雨宮まみさんと失恋

今週のお題「私の沼」

沼、という言い方をしていいのか分からない。

でも私にとってどうしようもなく気になってしまう存在なら、雨宮まみさんかもしれない。

雨宮 まみはAVライター、作家。福岡県出身。 主にエロの媒体で執筆し、自らも「AVライター」と名乗る。しかしエロ以外の媒体でも「雨宮まみ」として執筆している。別名義では官能小説も執筆している。2011年『女子をこじらせて』を出版。 - wikipedia -

 

まみさんを知ったのは去年亡くなる数ヶ月前、Twitterに流れてきた、まみさんが連載していたWebコラム雨宮まみの"穴の底でお待ちしています"の記事を読んでから。

穴の底~、はネットで寄せられたお便りを元に、まみさんが投稿者の愚痴を聞くコーナー。まみさんの文章はいつも誠実で優しく、一貫した姿勢で書かれている。

  • 相手を否定しない
  • 押し付けない

文章のひとつひとつがただの綺麗な言葉や勢いではなく、経験と丁寧な思いやりで綴られていて、それが伝わってくる。そしてそれは近すぎず、少し離れた所から暗くなった心の中をふわっと小さく照らしてくれるカンテラの灯りのような優しさがあり、自然ともうちょっとがんばれそうとか、なんとかなるかもという気持ちになれて、落ち込んだ時などにふいに読みたくなる。

 

 

穴の底~のコラムを読んですぐに、私はまみさんの文章が、まみさんが大好きになった。

その後、女子をこじらせてを読み、自分の半生を赤裸々に書ききり、色々なジレンマを抱えながらもライターとして凛と生きるまみさんは、憧れになった。

時には厚かましいけれど戦友のように感じることもあった。

強いコンプレックスを持ちながら育ち、福岡から上京して東京に居場所を見つけたまみさんと私の共通点が、そう感じさせた。まみさんは少しだけ近くて遠い、そんな存在だった。

 

だから、まみさんが亡くなった時はショックだった。

面識もなく、書籍数冊分しかまみさんの事は知らない。だけど、思ったよりもずっと悲しくて、「もう新しい文章は読めないんだ」と寂しかった。

 

それでも今も、まみさんの文章を読んで、癒されたり励まされたりしている。

 

まみさんが亡くなった後、私は失恋をした。

その恋愛では、長い間無自覚だった心の痛みに気づいて、自分の考えが根底から変わるような出来事があった。そのとまどいと失恋で、絶望こそしていないけれど、しばらく自分のことがよく分からなくなり、散り散りにバラけて洗濯機でぐるぐる回り続けているような気分になった。

 

私は悩みがある時、お気に入りの本を読んで、落ち着いたり自分の気持ちを分析するクセがある。その時一番心を落ち着かせてくれたのは、まみさんの文章だった。

そしてこの文章を読んだ時、しばらく涙が止まらなかった。

最初から自分のことを自然に愛することができなかった人間にとって、人生は自分を愛するための冒険であり、それをする過程で他者への愛を知ろうとする冒険でもあると私は思います。そして、いろんな思いをして勝ち取った「好き」という気持ちは、そう簡単に揺らぐものではないんじゃないか、と思うのです。 - 雨宮まみの"穴の底でお待ちしています" -

 

私は長い間コンプレックスから、自分のことが好きになれずにいた。でも、そう思う自分を嫌だと思っていたし、どうしたらいいんだろう?と模索したりしていた。

やっと、先に書いた恋愛でのとある出来事で、もしかしたら自分を好きになれるかもしれない、という心境になった時、これを読んだ。今までは頭で理解していた言葉が、体感として腑に落ちて「わかる」感覚がした。

 

「そうか、冒険なんだ」と思ったら、今までは義務感のように重く感じていた自分を好きになることが楽しみな気持ちになったし、また大切にしたいと思う誰かと出会えるとも思った。他にもまみさんの文章を追いながら、今まで苦しかった気持ちや本当はしたかった、したくなかった事を思い出したり、自分自身に問いかけて確かめて、自分の感覚を取り戻していった。

その後、私の気持ちは一気に軽くなって、数十年も戦ってきた呪縛があれから解けた気がする。多分。気づくのは遅かったけれど、まみさんの文章との出会いも、彼との出会いも、私にとってはあの時が必要な、本当に気づくタイミングだったのだと思う。

 

琴線に触れる文章というのは内容以外にも、文体だったり比喩だったり色々とあるけれど、それが伝わる波長の強さみたいなものもあると思う。上手く文字で表現できないけれど、そんな感覚をまみさんの文章に感じる。ちょっと切なくて、深くまで伝わる心地のいい感覚。

 

まみさんは眠ってしまった。

だけど読み返すとそこにはいつも通りのまみさんがいて、温かく迎えてくれる。読んでいてちょっとずつ感じ方が変わることもある。変わってもまみさんは魅力的で、その度に、まみさんがどう伝えたかったのかと考える。

私にとってまみさんは、いつまでも解けない秘密を抱えた憧れの人で、きっとこれからもその文章を追いかけて、確かめずにはいられないだろう。

 

まじめに生きるって損ですか?

まじめに生きるって損ですか?

 

 

女子をこじらせて (幻冬舎文庫)

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