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カセットテープが語る「13の理由」

もう何年も前のこと、出張だったか帰省で飛行機を利用した時のことです。

到着した空港のベルトコンベアの前で、私は自分の手荷物が流れてくるのを待っていました。

私の他にも何人か待っていて、その中には体の不自由なおばあさんがいました。

おばあさんは腕が震えていて、流れてきた自分の荷物を上手く持ち上げることができません。

紐に手を伸ばしては失敗し、荷物がまたベルトコンベアを循環し飲み込まれていきます。

私は

「手伝おうかな、どうしようかな、なんとなく気恥ずかしい・・・」

と心の中で悩んでいました。

迷いながら3回目、おばあさんの荷物が近くに流れてくるのをドキドキ待っていた時、スーツ姿の20~30代ぐらいの男性がスッと前に出て、おばあさんの荷物を引き上げ、渡して去って行きました。

 

私はずっと、この時のことをよく覚えています。

おばあさんが困っているのは見てとれたのに、手伝いたいと思った気持ちがあったのに、何もしなかった。

今でも、ほんの小さな迷いで思いとどまった恥ずかしさを感じ、良心に逆らった後悔をしています。

  

13の理由を観ている時、何度もこの空港での事を思い出しました。

 

13の理由は、Netflix制作の海外ドラマ。シーズン1全13話。

あらすじは、17歳のハンナ・ベイカーはいじめを理由に自殺をします。

彼女が残したものは、カセットテープ。

そこには彼女の口から、関わりのあった13人とのエピソードが語られており、自殺の理由が明らかになっていきます。

重いテーマですが、ずっと重苦しい雰囲気でいじめシーンが続くわけではなく、ミステリーの感覚で見られます。

 

カセットテープの人物がみな悪意に満ちた分かりやすい悪人というわけではありません。

それぞれの人物が、軽い気持ちや、面倒くささ、恥ずかしさや誤解、コミュニティから弾かれる怖さなどから取った行動が、積み重なっていきます。

 

13の理由は海外で爆発的なヒットになり、学校によっては話題にするのを禁止したり、自殺を美化している、と視聴禁止になったりしているそうです。

でも、私が観た限りでは、自殺を美化しているとは感じませんでした。

自殺は悲劇として語られ、ハンナの死も美しく演出されているわけではないからです。

内容が内容だけに、影響が心配になるのは分かるんですけどね。

 

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恥ずかしかったり気まずかったりしても、何かをする時・しない時に良心の痛みを感じるなら、思いとどまったり、逆にその気持ちを無視せずに行動する、当たり前だけれどそうできる自分でいたい、でも迷わずそれができるだろうか、と考えさせられた作品でした。

(いじめは良心の呵責がゼロだったとしても絶対ダメですが)

 

もしハンナと同じ状況になったら・・・軽々しく、私なら耐えられるとはとても言えません。

ハンナから相談されても、うまいアドバイスは思いつかず、きっと「死なないで」ぐらいしか言葉にならないだろうなと思います。

でも、死なないで欲しかったよハンナ。

最初はゆっくり見ていたのですが、9話目ぐらいから目が離せなくなって、そこからは早かったです。そのあたりからかなり話もヘビーになるのですが、それ以上に先が気になって仕方ありませんでした。

 

関連作品として、「13の理由:現代が抱える社会の闇を考える」という作品も配信されていて、製作者やキャストがドラマで取り上げたテーマについて語っています。

時には臨床心理士や専門家のコメントも交え、いじめや暴行の残酷さ、問題の複雑さを訴え、また、その被害者を優しく支えるような内容になっていて、製作者の「自殺をなくしたい」「悩んだら相談して欲しい」という真剣な思いが伝わってきました。こちらもおすすめします。映像がネタバレの連続なので、本編完走のあとにぜひ。

 

ティーン向けかと思いきや社会派で、大人も夢中になれる作品だと思いました。

シーズン2の制作も決まっているそうで楽しみです。